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霞ヶ浦から続く常陸利根川は豊かな水を湛え、生育する水稲の緑が平野を被っている。豊かな秋の実りを予感させる水と緑に溢れている。潮来は、水郷として知られる。平成一三年、旧潮来町と牛堀町が合併し、新生潮来市となった。潮来市立図書館は、その合併記念事業として計画された。

このプロジェクトの課題は、統合によって使われなくなった旧牛堀地内にある小学校校舎を活用し、図書館という新たな施設を創出することであった。すなわち、資産の有効活用と市民待望の今日的な図書館の建設を両立することが企図されたのである。

試行錯誤の末、コンバージョンのプログラムは、小学校の校舎であった部分の内部を改造して管理諸室・閉架書庫・集会室に割り当て、開架スペースを増築することに行き着いた。

市町村立図書館の中心となる場は、開架スペースである。そこでは、誰もが気軽に訪れ、思い思いの過ごし方をすることができ、本をはじめとするさまざま資料をわかりやすく市民に提供される。その全体像を俯瞰しやすいものとするために、ひとつの空間とした。しかも、壁面は周囲のみとし、柱も最小限に留めた。

誰もが気軽に本やその他の資料に触れることができるように、車椅子でも通れる通路の巾を確保し、書架は車椅子の人でも手の届く高さとした。一般向けの部分に紺色、児童向けの部分に黄色と、その書架に施した彩色が領域を示している。

この場所にあった学校は、明治以来地域の中心でもあった。小学校校舎であった面影を敢えて残しながら、それを包み込むようなドラスティックな増築部分を加え、新しい施設としての表情を創った。それの姿は、大地の根に張りながら立ち上がる力強さ、しなやかにそよぐ柳の枝のような軽やかさ、清々しい水の輝き、水面をすべる小舟、爽やかな風など地域のイメージの重層である。

斯くして、小学校校舎の転用に留まることなく、今日の図書館に求められる機能を充足するとともに、地域に新しい景観を付与するものとなった。

住所 茨城県潮来市牛堀289
竣工 2006年3月1日
建築面積 2,585.00㎡
延床面積 3,556.00㎡
各階延床面積 1階:2,352.00㎡、2階:1,187.00㎡、R階:17.00㎡
構造規模 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、地上2階
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