「Prism」 安城市図書情報館 アンフォーレ

安城市は三河平野の真ん中にある。明治用水によって開拓された田園地帯は日本のデンマークを標榜した。現在では自動車関連企業が立地し、その従業員が居住する住宅地に変容している。
敷地はJR安城駅前に形成された中心市街地にあるが、医療施設や商業施設の周辺への拡散によって往時の賑わいを失いつつあった。北側は七夕祭りのメインストリートに面し、区画整理が進行する南側へ延びる東側の市道との交差点に位置する。

中心市街地ににぎわいを創り出し、商店街の活性化を図るために、公共施設と民間収益施設とイベント広場、駐車場の4つの施設の複合体として整備することが求められた。その回答として、メインストリートに面する北側に公共施設と広場を設け、施設と街が密接に関係づき、市街地への人の流れができるようにした。そして、南側に民間収益施設、中間に立体駐車場を配置し、東側の道路に沿ってそれら3つの建物を2階レベルで連結した。

中心となる公共施設は5階建てである。1階の交流施設とホール、2階から4階の図書館を中心とする機能、5階のヘッドクォーターで構成される。1階はまちに開かれ、街のにぎわいを吸収し、増幅させて街に開放する。上階に上がるにしたがって静寂になるように積層している。

かつて知多から三河かけての地域では田園の地下にある不透水層を掘り起こして煉瓦が製造された。土が隆起したような煉瓦の壁を立ち上げて場所の由緒を示すことにした。また、安城市は仙台・平塚と並ぶ七夕の名所である。ガラスのキューブを市松状に突出させることで七夕飾りとの符合を試みた。

ガラスのキューブはプリズムである。プリズムは周囲の空間とは異なる屈折率をもつ透明な媒体でできた多面体である。日本語で三稜鏡とも呼ばれたが、もとは角柱の意味をもつ。透明な角柱が周囲とは異なる光を分散・屈折・反射・複屈折させ、知識・情報の集積、人々の交流、情報発信の新たなスペクトルを放つように、この建築の存在そのものが街のにぎわいを創り出すものとした。

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